「はぁ・・・・・・」


ため息を付きながらも、その手はせわしなく動いている。


「なんで僕が作ってるのかなぁ」


今日は2月13日。夜も23時をまわっている。
シンジは、既に部屋に戻り幸せな睡眠を味わっているであろう同居人を襖越しに見た。





エヴァ短編

ヴァレンタインデーすぺしゃる







時間は昼間に遡る。
使徒という、なぞの生命体の襲来を受ける第三新東京市。
そこにある第三中学でも、
この時期になると日本の他の地域と変わらず乙女達はざわめきだす。
例えそれがチョコレートメーカーの策略であったとしても、
乙女達にとって好きな相手に気持ちを伝えられる、大切な日であることに変わりは無い。
2−Aでも、2月に入ってからは乙女達の話題はその事で持ちきりだったのだが、
残念な事に帰国子女である惣流・アスカ・ラングレーは、日本の習慣など知らなかった。
そして、今日は2月13日。


「ねぇアスカ。アスカは明日誰にチョコを渡すの?その・・・・・碇君?」

「はぁ?何言ってんのよヒカリ。何で私があんなヤツに何かあげなきゃなんないのよ。
 ってかどうして明日?なんかあったっけ?」

「何でって、明日はヴァレンタインデーじゃない」

「ヴァレンタインデー?何それ」

「知らないの!?ヴァレンタインデーっていうのは――――――」


ヒカリは、懇切丁寧にアスカに説明した。
アスカは黙って聞いていたのだが


「馬鹿みたい。ようするに、日本のチョコメーカーの策略でしょ?
 だいたい、何で私がシンジにチョコあげなきゃいけないのよ」

「だって、家事とかいつも碇君がやってるんでしょ?その御礼とか」

「あれはシンジが好きでやってるからいいのよ」

「だけど・・・・」


アスカは、結構大きな声で話していた。
だから、聞こうとしなくても近くで話していたシンジたちには聞こえていた。


「まぁ、落ち込むなやシンジ」

「別に期待はしてなかったからいいよ」

「でも、惣流も御礼くらいしてもいいと思うけどな」

「せやけど催促するわけにもいかんしなぁ。
 そうや、綾波ならくれるんちゃうか?」

「綾波がくれるわけないじゃないか・・・・・」

「確かに。綾波だしな」


心が未発達な少女綾波レイ。
彼女がヴァレンタインに興味を持つとはどうしても思えないシンジだった。

 
 

 
 


 
 

そして夕方

「ただいま〜って、あれ?アスカ帰ってないのかな?」


買い物を終え帰ってきたシンジは疑問に思った。
先に帰ったはずのアスカの靴がない。
「洞木さんと遊んでるのかな」と考えたシンジは、
ペンペンに挨拶をすると、買ってきた材料を冷蔵庫に入れる。
そして、この家の主夫でもあるシンジにとって、
平日で唯一くつろげるこの夕方のひと時を満喫していた。



しばらくワイドショーを楽しんでいると、電話がかかってきた。
見ると、ミサトの携帯からだった。


「はいもしもし」

『あ、シンちゃん。今日帰れなくなっちゃった』

「いいですよ。まだ夕食も作ってませんでしたし」

『ごめんねぇ〜。リツコがへましちゃってさ。
 ホントだったら、今夜はシンちゃんの為にチョコ作る予定だったのに』

「ええ!?」

『そうそう、リツコから伝言。「チョコの代わり、これでいいわね」ですって。
 これってなに?シンちゃん何かしてもらったの?』

「あ、はい。今日疲れてるから訓練を休みにしてもらって」


シンジは、とっさに嘘をついた。


『そうなの?まぁいいけどねぇ。ところでシンちゃん。
 私がいないからってはめ外しちゃ駄目よん』

「なんのことですか?」

『だからぁ、アスカに「0時過ぎたね。今日はもう2月14日。
 シンジ、チョコの代わりに私を食べて」って言われても、ホントに食べちゃ駄目よ』

「ミ、ミサトさん!アスカがそんなことするわね無いじゃないですか!」

『あら、分からないわよ〜?』

「絶対にありません!もう・・・・他に用事が無いなら切りますよ?
 夕飯の用意もありますから」

『シンちゃんのいけず。私はもう少しシンちゃんとお話したいのにぃ』

「はいはい分かりました。それで用事は無いんですか?」

『シンちゃんつれないんだから。用事は無いわ。じゃ、もう切るから』

「はい」

『徹夜だから、帰るのは明日の夜になるから』

「分かりました。じゃ切りますね」

『じゃあねん』


電話を置いたその時、玄関の扉が開く音がした。
アスカが帰ってきたのだ。


「お帰りアスカ」

「ただいま〜。あぁ疲れた」

「遅かったね」

「ヒカリとちょっとねぇ。それよりシンジ、はいこれ」

「なに?」


それは調理用のチョコレートだった。しかもお徳用だ。
他に買い物袋に入っていたのは、
「初めての手作りチョコレート」と書かれた本。
それにおそらくチョコ作りに使うと思われる道具と材料が数個。


「ヒカリがヴァレンタインヴァレンタイン言ってるから、チョコが食べたくなったのよ。
 でも生憎売り切れててね。と、言う訳であんた作って」

「・・・・・は?」

「だから、あんたが作るの!
 材料と道具、それにレシピはそろえたから出来るでしょ?」

「なんで僕が」

「いいじゃない、別に。それより晩御飯は?」

「ごめん、まだ作ってない」

「もう、何やってんのよ!ホンットどんくさいんだから」

「ご、ごめん」

「そうやって直ぐ謝るし。いいからさっさと作ってよ」

「わ、分かったよ」


シンジは、チョコの材料を片付けると、急いで料理をはじめた。

 
 

 
 


 
 

そしてご飯も食べ終わり、風呂にも入り終えた2人は、
リビングでテレビを見ていた。もちろん、番組はアスカが好きなやつだ。
だが、シンジは文句1つ言わずに見ている。
何だかんだでテレビは面白いし、何より文句を言うとアスカに何をされるか分からない。
それにアスカと一緒にいられる時間は、シンジにとってなんとなく幸せな気分だった。
そうしているうちに時間は過ぎて22時。


「そうだ、シンジ」

「なにアスカ?」

「チョコレートだけど、・・・・・・・・ほら、これが食べたいのよ」

「これ?トリュフなんて作れないよ。
 だいたい、チョコレートって扱いが難しいんだよ?うまく出来るわけないじゃないか」

「やる前から諦めるなんてサイテーね」

「仕方ないだろ?
 そんなに食べたいなら、明日僕が買ってくるから」

「駄目よ!あんたが作るの。
 だいたい、買いに行ってたら間に合わないじゃない」

「どういうこと?」

「ヒカリと約束したのよ。明日作ってきたチョコ見せ合おうって」

「えぇ!?」

「私は食べたいだけだったんだけど、
 ヒカリってば渡したい相手がいるのよね〜」

「そうなんだ。あの洞木さんが・・・・・何か意外だなぁ」

「あんたは・・・・・ホント鈍感ね。
 とにかく、ヒカリが1人で学校にチョコ持ってくるのが恥かしいからって、
 わたしも持ってくることになっちゃったのよ」

「だったら自分で作ればいいじゃないか」

「私に出来るわけ無いでしょ?
 とにかく、ちゃんとチョコ作るのよ。私に恥かかせないでよね。
 そうねぇ・・・・美味しかったら、学校で1つくらいわけてあげるわ。
 それなら、あんたも面子が立つでしょ?本来なら1つも貰えるわけないのに」

「そんな言い方って・・・・・」

「とにかく、頼んだわよ!じゃ、私もう寝るから」


そう言ってアスカは自分の部屋へと入って行った。
かくして、シンジは作ったことも無いチョコレートを作るはめになったのだ。

 
 

 
 


 
 

午前3時

初めてということもあって、トリュフ作りはなかなかうまくいかなかった。
1キログラムあったお徳用のチョコも、みるみる減っていく。
味が、形がと色々失敗を繰り返し、やっと8個完成した。
途中アスカが「うるさい」と起きてきて蹴られたりもしたが、
これでアスカの要求にこたえることができるだろう。
材料と一緒に買ってきてあった箱に入れ、
ラッピングをして、おまけにリボンまでちゃんとつけて。
仕事に満足したシンジは、急に襲ってきた睡魔に負けて眠ってしまった。

 
 

 
 


 
 

「すいません!遅れました!」


シンジは見事遅刻した。
起きたのは9時過ぎ。
その時には作ったはずのチョコは無く、アスカもいなかった。
どうやら置いて行かれたようだ。
そのアスカだが、シンジの寝坊で朝食を食べ損ねている為か、
教室に入ってきたシンジを睨んでいる。
その視線にビビリながらも、シンジは自分の席につき、
そうして授業は再開された。



時は流れて昼休み



もちろん、寝坊したシンジに弁当を用意する時間があった筈も無く、
アスカと仲良く昼御飯抜きだった。
そこで購買部で買ってくるからと言ったのだが、


「はん、私に売店のパンを食べさせるつもり!?
 冗談じゃないわ!あんた、今から作りなさい!」


と、無理難題を押し付けられてしまった。


「アスカ、さすがに無理よ」


との天の助け(ヒカリの言葉)により、
何とか売店のパンですませることができたのだが、
それでも


「アンパン?そんなので満足できるはず無いじゃない。
 コッペパン?ふざけるんじゃいわよ!この焼きそばパンをもらうわ」

「そんな!それ1個しかなかったのに」

「じゃあやっぱり私が食べるべきじゃない。
 ついでにアンパンももらうわ。あんたコッペパンで我慢しなさい」

「無理だよ!」

「あんたが寝坊して弁当作ってこなかったから悪いんでしょ!
 だいたい、あんたは――――――――」


アスカは、シンジの買ってきたパンと牛乳を食べながら、
昼休みの間ずっとシンジに説教をした。
ヒカリやケンスケ、トウジは何とか止めようとしたのだが、
逆に火に油を注ぐかたちとなり状況は悪化。
シンジは、寝不足もたたり、心身ともに疲れてしまった。



やっとの事で放課後



シンジたち3馬鹿トリオは、遊びに行く為にさっさと帰ろうとしたのだが、
アスカとヒカリに呼び止められてしまう。
教室には、いまだ数人の生徒が残っている。
モジモジしているヒカリにアスカが促すと、
ヒカリはトウジをつれてどこかへ行ってしまった。


「なるほどな。惣流も友達思いだよな」

「まぁヒカリのことだしね。私はあんなののどこがいいか分かんないわ」

「あれで結構いいやつなんだぜ?トウジのやつ」

「どうだか・・・・・。あ、そうそう。これあげるわ」

「ええ!ほ、本当にいいのか!?」


アスカが取り出したのは、シンジが昨晩せっせと作ったトリュフだった。


「全部は駄目だけどね。一応友達だし1つあげるわよ。
 でも、包むものも無いからここで食べなさい」

「あ、ありがとう!くぅ〜、この世に生まれて14年。ようやくこの日が!」

「お返し期待してるわよ」

「任せてくれよ!」


どうやら、ケンスケは今日はじめてチョコを貰ったらしい。
本当に嬉しそうに、シンジの作った手作りチョコを食べている。
シンジは、呆然としてそのやり取りを見ていたのだが、
不意にアスカと目が合った。
アスカは、シンジだけに見えるようにニヤリと微笑むと、
さっさと教室を出て行ってしまった。
後に残ったのは、本当に嬉しそうなケンスケと、
あのアスカが学校で唯一チョコを渡した相手がケンスケだったことに驚いているクラスメイト、
それにいまだ呆然としているシンジがいるだけだった。

 
 

 
 


 
 

夕日に染まる公園のブランコに、シンジはただ座っていた。
アスカとケンスケのやり取りを見た後、
気がついたらここに座っていた。
どうやってきたのかも覚えていない。


(なんで僕はここにいるんだろ?
 はぁ・・・。なんだか今日は帰りたくないな。
 いまアスカには会いたくないし。でも、ケンスケ嬉しそうだったな。
 ・・・・・・もしかしてアスカ、ケンスケのことが好きなのかな?)


そういう考えが浮かんだシンジだったが、


(あれ?どうして胸が苦しくなるんだろう?
 ケンスケは盗撮とかしてるけど、よく気が付くし考え方はなんか大人だし。
 アスカが好きになっても・・・・・・・。でも待てよ。アスカは前に加持さんが好きだって。
 そういえば、加持さんにはチョコ渡したのかな?
 もし渡してなかったら・・・・・・・やっぱりアスカはケンスケの事を)


シンジはネガティブな性格だ。
考えは、どんどん悪い方にいく。
そうしているうちに、気が付くと膝が濡れていた。


(泣いてる?なんで涙が・・・・・。
 別にいいじゃないか!アスカが誰と付き合ったって!
 それなのに・・・・・なんでこんなに悲しいんだろう?)


いつの間にか、あたりは暗くなっていた。

 
 

 
 


 
 

「こんなところで何やってんの?」

「・・・・・アス、カ?」


目の前にはアスカがいた。
ずっと彼女の事を考えていたからだろうか?
腰に手を当ててこちらを見ているアスカの姿は、
シンジにはとても魅力的で・・・・・。
彼女が「加持、ケンスケと付き合う」との考えが浮かんだシンジは、
また涙が溢れてきた。


「ちょ、何泣いてるのよ?」

「・・・んだ」

「は?聞こえないわよ」

「嫌なんだ!アスカが加持さんと付き合うとか思うと!
 ケンスケと付き合うんじゃないかって考えると!
 何でか分から無いけど嫌だ。涙が止まらないんだ!」


シンジは下を向いている。顔は涙や鼻水でグチャグチャだ。
アスカは、シンジを見ながら黙って立っていた。
やがてため息をつくと


「あのねぇ。加持さんはともかく、
 何で私が相田と付き合わなきゃいけないのよ?」

「だって・・・・チョコ」

「あれはそんなんじゃないわよ。
 朝と昼、あんたの所為でまともな食事が取れなかったから、
 お返しにちょっと恥をかかせてやろうかな〜って思っただけよ」

「恥ってどういうこと?」

「だって、普段いっしょにいるあんたじゃなくて、
 相田がチョコを貰うのよ?鈴原はヒカリがあげるってわかっただろうし。
 あんただけチョコもらえなかったって事が広まれば恥かしいでしょ?」

「その為に?本当にそれだけの為に?」

「そうだって言ってんでしょ!いい加減信じなさいよ!」

「ご、ごめん」

「なんで謝ってんのよ」

「ごめん」

「ほら、また」

「ごめ・・・あっ」

「まったく。だいたい、そんな事で無くんじゃないわよ。
 この泣き虫バカシンジ。ふふふ」

「わ、笑うこと無いだろ?」

「だって・・・・」


シンジは、知らぬ間に笑っていた。
2人は、しばらく笑いあった。
そして


「そういえば、まだ1つ残ってたのよね」


そう言ってアスカが鞄を漁って取り出したのは、
シンジの作ったトリュフだった。


「ほらシンジ。あ〜ん」

「ええ!?」


アスカは、チョコを右手でつかむとシンジの前に持ってきた。
楽しそうに、シンジに口を開けろと言っている。
どうやら食べさせてくれるらしい。


「でも・・・・」

「いいから!」

「じゃあ。あ〜ん」


シンジは言われたとおり口を開けたのだが


「嘘よ、ウソ」


そう言ってアスカはチョコを自分の口に。


「ひ、酷いよアスん"!?


一瞬、シンジは何が起こったかわからなかった。
目の前に広がるのは、ただアスカの顔。
10秒、20秒と時間が経ち、ようやくシンジは気付いた。


(アスかとキスしてる・・・・・。
 チョコの味かな?甘い味がする)


シンジはただ、ポーっとしてアスカのなすがままにされていた。
どのくらい時間が経っただろうか?
アスかが唇を離した。


「あっ・・・・」


シンジは、残念そうに声をあげる。
そんなシンジに対し、アスカは


「で?あんたの返事は?」


と問いかけた。


「ふぇ?」

「だから、返事は!?」

「返事ってなんの?」

「あんたバカぁ?今やった事に決まってるでしょ!
 ヴァレンタインの日に女の子の方からキスしたのよ。
 どういう意味かは鈍感なあんたでもわかるでしょ?」

「そ、それって・・・・・」


2人は黙ってしまった。気まずい時間が流れる。
アスカが耐えられなくなってきた時


「その、アスカは僕でいいの?」

「はぁ・・・・・。良いに決まってんでしょ」

「じゃあ、その、僕でよければ」

「よければ?なに?」

「つ、付き合ってください」

「・・・・・・良かった」


アスカはシンジに抱きついた。
きつくしがみ付く。
はじめは抱きつかれた事に動揺したシンジだが、
その肩が震えているのを見ると、
優しく彼女を抱きしめた。
アスカは、本当は恐かったのだ。
気が付いたらシンジのことを好きになっていた。
だが、プライドもあり今更態度を変えることは出来なかった。
いつも我侭ばかり言っているから、嫌な思いをさせているから、
もしかしたら嫌われているのではないか?
他ことには自信を持っていたアスカだったが、
そのことに関してはずっと心の奥に棘が引っかかっていた。
思いを遂げられ、押し留めていた気持ちがあふれ出し、
どうしても涙を止められなかった。


「――――――もういいわ。ありがとシンジ」

「ほんとにもういいの?」

「うん」

「そっか。・・・・・もう帰ろうか?」

「うん」


2人は、腕を組んで公園を出て帰路を急ぐ。
これから2人はどうなっていくのだろうか?
つらい事もあるだろうが、彼らなら大丈夫だろう。
2人の未来の幸せと、保護者のMさんの心の平穏を願って。

 
 

 
 


 
 

 
 


 
 

 
 


 
 

 
 


 
 

〜おまけ〜

 
 

「おかえり〜シンちゃん、アスカ」

「「ただいま」」


うちに帰ると、既にミサとは帰宅していた。
酔っているのか、2人のラブラブな雰囲気にまったく気が付かない。


「ごめんねぇシンちゃん。結局チョコ作れなかったわ」

「そ、そうですか。・・・・・良かった

「ん?何か言った?」

「いえ!何でも」

「そう?でね、代わりのモノを用意したのよ。こっちよん」


そう言って、ミサトはシンジの部屋へと入っていく。


「何か料理したんじゃないんでしょうね?」

「ま、まさか・・・はは、そんなわけ無いじゃないかアスカ」

「どうかしら?まぁ、今日はヴァレンタインだし、
 あんた責任もって食べなさいよ」

「そんな!アスカも手伝ってよ」

「いやよ」

「僕たち付き合ってるんだろ?」

「あんたは自分のみを守るためなら、彼女がどうなっても良いっての?」

「う"っ」


そう言われると、シンジは反撃できない。


「シンちゃ〜ん、何してるの〜?早く来なさいよ〜」

「は、は〜い」


2人は、恐る恐るミサトの待つ「シンちゃんのお部屋」へと足を進めた。


「あれ、綾波?」


そこには何とレイがいた。


「どうしてここに?」


レイは、今日学校を休んでいたはずだった。


「レイは、昨日から私と一緒にNERVで仕事してたのよ。
 で、今日はヴァレンタインデーでしょ?
 シンちゃんに用があるって言ってたから連れて来たの」

「ふん。一体何のようなのよファースト」

「アナタには関係ないわセカンド。・・・・碇君」

「な、なに?」


レイは、黙って自分の頭にリボンをつける。


「今日はヴァレンタインデー。女子が男子に思いを伝える日」

「そ、そうだね」

「葛城3佐が教えてくれた。
 碇君、チョコレートは用意できなかった。
 だから、代わりに私をたべて」

「うぇえ?」


戸惑い固まるシンジに構わず、レイは抱きついてくる。


「よかったじゃないシンジ」


冷や汗が止まらない。
後ろから強力なプレッシャーがシンジに襲い掛かった。


「ア、アスカ、これはその」

「・・・・・・・こんのバカシンジがぁあああ!!


ぎゃあああああああ!!!!!


帰ってくるまでの甘い雰囲気はどこに行ったのか。
シンジはビンタまともにうけて気を失って倒れ、
アスカは顔を真っ赤にして怒っている。
レイは、いまいち状況をつかめずに首をかしげている。
ミサトは、そんな3人を肴に酒を飲んでいた。




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