こうして、俺は無事(?)両性有具になりました。
フェロモン機能が付いたままで








ある男の悲劇と対策
第9話



取りあえず、何時までも初号機の中にいるわけにはいかないと思い、
現状の整理をするためにも、外に出ようということになったのだが、
ユイは首を縦には振らなかった。曰く、

「まだ使徒も倒してないのに、外に出て無駄に年をとるのは嫌。
 それに、あなたがゲンドウさん本人ではないと分かった以上、
 キョウコやリツコとの修羅場はごめんだ」

ときた。研究を手伝って欲しいと言ったのだが、
自分の知識はすでにシンジに渡してあるとのこと。研究はシンジ達に任せるそうだ。
どうやらこの女「人類の未来〜」などと言っていたのに、
ただ単純に、エヴァの中で年をとらずに永遠に生きていたかっただけらしい。
俺は心底呆れていまい、これ以上何も言うまいと心に誓った。






シンジを伴って初号機から出てきた時は、取り込まれてからすでに1年が経過していた。
肉体の定着に戸惑った所為らしい。
これ以上出てくるのを遅らせるわけにはいかないと、逆行アスカに初号機に入ってもらい、
無理やりにでも引っ張り出そうと計画し、準備をしていて、いざ結構しようとしたら、
コアに反応があり、出てきたらしい。初号機のケージには、
キョウコとリツコ、逆行アスカに冬月が集まっていたが、出てきた時は、さすがに驚かれた。
何せ、ゲンドウが出てくると思っていたのに、実際に出てきたのはおっとりした印象(もしもラブひなをご存知の方は、
乙姫むつみを思い出してください)の少女。
しかもフタナリの少女だったのだから。そして自分をゲンドウだと言っている。
そのあと直ぐにシンジが出てきたのだが、逆行アスカに何故こうなったのか説明を求められ、
つい俺と関係したことまで口走ってしまい、激怒した逆行アスカに裸のまま
引き摺られてどこかに連れて行かれてしまった。
俺はといえば、1年も放って置かれたとキョウコとリツコに散々愚痴られて、
無理やりされたとはいえ、シンジと浮気をしたことを責められた。
いくら抵抗できなかったと説明しても聞いてもらえず、
その場で、裸のまま正座をして2時間も説教を受けることになってしまった。
その間冬月もそばにいたのだが、俺を見る目が露骨に怪しい。
これがフェロモン効果だろうか?以後二人きりにならないように気をつけなければ。








2013年



あの後も、キョウコとリツコとの関係は続いていた。
キョウコは、はじめは戸惑っていたが、さすがに今は慣れたようだ。
リツコの方は、どうやらその気があったらしくはじめから嬉々としていた。
俺の体のことは、事実は話すことができないので、
ゲンドウにもしもの事があった時のために、英才教育をうけ育てられたゲンドウの妹という事になった。
名前は、「六文儀ヨミ」という事になった。ゲンドウは事故死ということに。
ちなみに、冬月からは幾度となく襲われそうになったのだが、
この体は老体には毒らしく、危ないところでいつも冬月が発作(心臓の)を起こし、
何とか貞操だけは守ることができた。もし冬月が若かったらと思うとぞっとする。
逆行シンジ・アスカ組といえば、あの後3ヶ月ほどシンジをつれ二号機に篭っていたが、
久しぶりに出てきたと思ったらアスカの妊娠が発覚。
肉体年齢はともかく、二人とも実際はエヴァの中と逆行前を含めて、
すでに20年は生きていたので、「問題ない」ということでめでたく結婚することとなった。
キョウコとユイは、

「「こ、この年でお婆ちゃん・・・・」」

と黄昏ていたが、パパ(ママ)のママと呼ばせることで納得したらしい。
結婚に際して、碇シンジと惣流アスカのままでは、
この世界の2人に悪いだろうということになり、名前を変えることになったのだが、
色々協議した結果、
神木(かみき)シンイチ、アスナとすることで落ち着いた。
生まれてきた子供は女の子で、ユメと名づけられた。
俺の体のことは別にして、このところ平和が続いていたので、俺も周りも完全に気を抜いていた。
そして、事件が起こった。







2013年 8月4日

第2新東京市

この日、政治家とNERV高官が集まり、パーティーが行われた。
NERVからは、俺を含め、キョウコとリツコ、そして神木夫妻が招かれた。
ユメは、NERV本部でアスカと共に仲良くお留守番している。
招待をされたはずの戦自の連中、そして総理がいないのが気になったが。
パーティーはつつがなく進み、いよいよお開きとなった時、事件が起きた。

バンッ!

という音と共に扉が開き、武装した男達が入ってきたのだ。彼らは、

「NERVは、居もしない使徒という敵をでっち上げ、
 我らが国民、しいては世界中から血税を搾り取る世界の敵である。
 そのNERVに味方する連中も同罪だ。粛清する!」

と言って、銃を向けてきたのだ。

(この場はおとなしくして、隙を突いてシンイチ達にやってもらうしかないか)

そう、逆行といえば当たり前のこと。2人はATフィールドが使えるのだ。
俺達を守るだけなら何の心配もないのだが、政治家達もとなるとうかつに動けない。
シンイチ達も俺と考えが同じだったらしく、大人しくしている。
俺も、昔だったら慌てただろうが、ゲンドウになって2、3年は
狙われることも多かったので、こういった事態には慣れていたのだ。
だが、慣れていない者もこの場には存在した。
政治家達はもちろん、キョウコとリツコである。
事もあろうに、2人は男達に食って掛かったのだ。とめる暇はなかった。

「あなた達、無駄なことはやめなさい。使徒の存在はすでにみとめられていることよ。
 どこの組織かは知らないけれど、NERVに敵対して無事に済むと思わないことね」

余りにも軽率な行動。そして・・・

「リツコの言う通りね。あなた達、大人し『パンッ!パンッ!』

そこで男達の銃が火をふいた。2人を狙って。

シンイチは、政治家達を守っていて動けない。
アスナはキョウコを庇った。だが、リツコはキョウコから離れていた為に庇いきれない。
俺は、とっさにリツコを庇った。

「ぐぅっ!!」
「ヨミ!!!!」

弾丸は、俺の胸を貫いた。
それを見たシンイチは怒り狂い、政治家達の守りをやめて男達を攻撃。
男達は一瞬で切り裂かれ、絶命した。




俺を取り囲むシンイチ達。キョウコとリツコは、俺に縋り付いて泣いている。

「ヨミ!しっかりしてヨミ!!」
「もう直ぐ助けが来るから!」

初号機の中で無理をしたおかげで、ATフィールドによる治療はできない。
薄れゆく意識のなかで思う。
(あぁ、俺死ぬのかな・・・・?ゲンドウになったり女になったり色々あったけど、
 この世界に来て幸せだったのかもしれない。少なくとも、悲しんでくれる女が2人もいるんだし。
 2人との子供欲しかったな。でも、その子供を見て、2人が俺の事を思い出して悲しむのなら、
 これでよかったのかも知れない。2人には幸せになって欲しい。泣き顔は似合わない)



『あれ、諦めちゃうの?』

俺が死を受け入れようとした時、頭の中に声が響いた。

(・・・・誰だ?)

『こんなところで死んじゃうなんてつまらないよ。そうだ!こうすれば・・・・』

(その声、もしかしてお前は)

『・・・・これでよし。さあ、続きを楽しもうよ』



その瞬間、俺の意識はまばゆい光に包まれた。







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