《本日12時30分より関東地方を中心とした関東中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。
 住民の皆さんは速やかに指定のシェルターに非難してください。繰り返します、本日・・・・・》







シャーマンシンジ

第1話









「・・・・・・だめだ。繋がらないや。どうしようか」

彼は碇シンジ。その隣には1匹の狐の姿が。狐の名はクルハと言う。
先日父親から「来いゲンドウ」とだけ書かれた手紙とIDをもらい、
クルハと共にはるばる長野から第三新東京市にやって来たのだったが、
指定された場所で2時間くらい待っていたのに、一向に迎えは来ない。
しかたなく手紙と一緒に入っていた写真に書かれていた連絡先に
先ほどから何度も電話をしているのだが、さっぱり繋がらなかった。
ちなみにその写真には20代後半くらいの女性が写っていて、連絡先の他にマジックで
「わたしが迎えに行くから、この場所で待っててね」と書いてあり、
今日の日付と時間、迎えに行く場所も書いてあった。
何を思ったのか、胸には「ココに注目!!」と矢印付きで書いてあった。
それを見たシンジは、
(この人誰なんだろう?父さんの女?新しいお母さんとかだったら嫌だなぁ)
と思った。





「それにしても遅いなぁ。ねえクルハ」

そう言ったシンジの目に、低く飛び交うVTOLが飛び込んできた。

シュパァアアアアアアア!

「巡航ミサイル?」

ミサイルの飛んでいった先には、巨人が立っていた。

ドゴオオオオンッ!!

ミサイルは全弾命中したが、巨人は傷ついた様子は無い。

「なんだ?戦争でも始まったの?それにしてもあの巨人はいったい・・・?」

そう考えていたシンジ達に、巨人に撃墜されたVTOLが突っ込んでくる。
だが、シンジ達にぶつかる寸前、まるで何かに弾かれる様に
VTOLは軌道を変えて、近くのビルに突っ込んだ。

「ありがとうクルハ」
「くわ〜〜ん」

その時、青いルノーが猛スピードで向かってくるのが目に入った。
ルノーは、シンジ達の目の前で急停止した。運転席の女が叫ぶ。

「お待たせシンジ君!早く乗って!!」
「あ、写真の人」
「いいから急いで!!」

シンジ達が乗り込むのを確認すると、猛スピードで来た道を引き返す。
だが、それ以上のスピードで迫る巨人。
と、地下からもう1体の巨人(悪人面した)が現れた。

「巨人が増えちゃった」
「アレは見方よ。今のうちに逃げましょう」

だが味方の巨人は、まったく相手になっておらず、
一方的にやられてしまい、投げ飛ばされたりして余計に町を破壊してしまう。
結局、5分もしないうちに再び地下へと引っ込んでしまった。






「遅れてごめんねシンジ君。私は葛城ミサト。ミサトでいいわ、よろしくね」
「よろしくミサト」
「ってシンジ君、幾らなんでも呼び捨てはまずいわよ?」
「自分でミサトでいいって言ったじゃないか」
「はぁ。まあいいわミサトで。それよりその狐は?綺麗な金色してるけど」
「クルハです。可愛いでしょ?」
「でも狐をペットにするなんて珍しいわね」
「ペットじゃなくて持霊(もちれい)だよ。僕の友達」
「持霊?」
「そうだよ。妖怪、妖狐の金色九尾(こんじききゅうび)の狐なんだ」
「よ、妖怪?」
「そう、妖怪」

それを聞いたミサトは
(この子大丈夫かしら?報告書にはそんなこと書かれていなかったけど)
と思った。

「その顔は信じていないね?」
「そ、そんなことは無いわよ」
「いや、絶対信じてないよ。どうせ幾ら口で言っても分からないだろうから、
 証拠をみせるよ。クルハ」

シンジがそう言うと、クルハの姿は一瞬にして消えてしまった。

「ど、どこに行ったの?!」
「ここだよ」

そう言ってシンジは右手を見せる。手首のところには石でできたブレスレッドが巻かれていた。

「このブレスレッドは、殺生石でできているんだ。
 狐の姿のクルハを連れて行けない場所に行く時とかは、この中に入ってもらってる」

それを聞いたミサトは、手を伸ばして触ろうとしたが、シンジに止められる。

「駄目だよミサト。殺生石だって言ったろ?
 力の無い者が触ると、呪いに負けて最悪死んでしまうよ」
「じゃあ何でシンジ君は平気なの?」
「僕は鍛えられたから」

そう言ってシンジは笑う。人間何度も死ねば、このくらい平気になるのだと

「死ぬってどういうこと?」
「そのまんまだよ。大抵ハオさんに殺されるんだけどね。
 あの人、人を殺すことに罪悪感なんて感じないから。
 あ、ハオさんは僕を鍛えてくれた人なんだ。
 死んだあとは地獄へ行って修行をするんだ。クルハと会ったのも地獄だった。
 もちろん、修行が終わればちゃんと生き返らせてもらえるけど」
「で、でも生き返らせるなんてどうやって?」
「その道のプロがいたからね。ファウスト8世って名前の医者なんだけど」
「ファ、ファウスト?」
「そう、あのファウストの子孫。ネクロマンサーなんだ」

ミサト絶句。もう何がなんだか分からず混乱してしまった。
それよりも、とシンジ

「VTOLが離れていくけど、撤退でもするのかな?」
「へ?・・・・ってまさか、N2地雷を使う気?!まずいわ、急がないと!」

スピードを上げるミサト。だが、無常にも後方で閃光が。

「シンジ君、ふせ「クルハ!!!」

ズドオオオオオオオン!!!!!

迫り来る衝撃波と爆風。ミサトは死を覚悟した。
だが、いつまでたっても衝撃は来なかった。

「大丈夫かミサト?」

顔を上げるミサト。外を見ると、N2により無残な姿になった町並みが。
しかし、ルノーには傷一つ付いていなかった。

「な、なんで?」
「僕がやったんだよ。そんなことより早く行かないの?あいつ、まだ生きてるよ。」
「そ、そうね。急がないと」

ルノーは再び走り出した。








やっとNERV直通のカートレインまでたどり着いた。
ミサトの緊張もようやく解ける。

「ところでシンジ君、お父さんからIDもらってない?」

手紙ごと渡すシンジ。手紙を見て、ミサトの顔が引きつる。
(何よこの手紙。こんなの普通息子に出すかしら)
が、気を取り直して1冊のファイルをシンジに渡す。

「悪いけど、これ読んでおいてもらえるかしら?」

ファイルには、「ようこそNERV江」と書かれていた。

「NERV?神経か。変な名前だね、ココ」
「あら、ドイツ語できるの?」
「できないよ。ファウストに聞いたことがあるだけ」
「お父さんの事は、何か知ってるの?」
「確か、人類を守る大事な仕事でしたよね。僕も鼻が高いよ」
「それ皮肉かしら?」
「どうだろうね」



カートレインがトンネルを抜けると、眼下には豊かな森が広がっている。
ピラミッドの様な建物と、湖もあるようだ。天井からは、ビルが生えていた。

「ジオフロントか」
「そう、人類の砦よ」
「どちらかというと箱庭かな。でも何か神聖な力を感じる。
 それにしても、昔見たことがあったような・・・・・・って、思い出した。
 昔よく遊んだっけ。湖の近くの森で」
「そうなの?」
「うん。懐かしいな。ところでミサト」
「何かしら?」
「クルハはこのままの方がいいかな?」

そう言ってブレスレッドを指差すシンジ

「そうね。その方がいいかもね」








同時刻

NERV本部・発令所



「・・・はい。了解しました」

戦自の将校が言う。

「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並み拝見といこうか。
 しかし、N2地雷も通じなかった相手に勝てるのかね?君は」

髭面にサングラスの男、碇ゲンドウが答える。

「ご心配なく、そのためのNERVです」

初老の男、冬月コウゾウが聞く

「しかし、碇。パイロットはどうする?」
「問題ない。たった今予備が届いた」







「・・・・・迷ったのかミサト」
「あはははは、まだ日が浅くて」
「時間が無いんだろ?誰か呼ぶことはできないの?」
「そ、そうよね。そうしましょうか」

ミサトが連絡を入れようとしたその時、後ろから声がかかった。

「呆れた。また迷ったのね、ミサト」
「リ、リツコ」
「ところで、この子がサードチルドレン?」
「そうよぉリツコ。この子がシンちゃんよ」
「はじめまして碇シンジ君。自己紹介させてもらうわ。
 私は赤木リツコ。技術一課担当主任よ。リツコでいいわ」
「だ、だめよリツコ。そんなこと言ったら」
「はじめましてリツコ。僕もシンジでいいよ」

引きつるリツコ

「ところでリツコ、もしかして父さんの再婚相手はお前か?
 最初はミサトと思ったけど、違うみたいだし」
「な、なぜそう思うのかしら?」
「だって、白衣の下に水着なんて、普通は着ないだろう?父さんの趣味じゃないの?」
「違うわよ!ゲンドウさんはそんな趣味じゃ・・・」
「あれぇ?リツコ。ゲンドウさんなんて呼んじゃって。やっぱり付き合ってるんじゃない。
 みずくさいわよ、私に黙ってるなんて。でも趣味悪いのね」
「煩いわミサト!!そ、そんなことよりついて来て!時間が無いのよ!!」

そう言って歩き出すリツコ。ミサトとシンジは、ニヤニヤしながらついて行く。







同時刻

発令所

メインスクリーンには、再び進行を始めた使徒の姿が写し出されていた。
初の実戦に、皆の緊張感が高まる。
「司令!使徒、強羅最終防衛線を突破!なおも進行中!」
「総員、第一種戦闘配置」
オペレーターからの報告に指示を出すゲンドウ。
「冬月、後を頼む。」
そしてそばにひかえる初老の男に一言のこすと、個人用エレベーターで下に降りていく。
(8年ぶりの親子の対面か・・・)












「真っ暗ですね」
「今、明かりを点けるわ」

目の前には巨大な顔があった。

「さっきの巨人だ」
「これが人類最後の切り札。人の造りだした究極の人型汎用決戦兵器、
 人造人間エヴァンゲリオン。その初号機よ」
「これが父さんの仕事ですか?」
「そうだ」

上から声がかかる。

「久しぶりだな、シンジ」
「父さん!久しぶりだね。元気そうで良かったよ」

シンジの様子に戸惑うゲンドウ。
彼の予定では、もう少し内向的な性格になるはずだったのだが。
気を取り直して、ゲンドウはシンジに言う

「出撃」
「・・・・は?」

いきなりの台詞に戸惑うシンジ。

「よく聞けシンジ。お前がこれに乗って使徒と戦うのだ」







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