「よく聞けシンジ。お前がこれに乗って使徒と戦うのだ」









シャーマンシンジ

第2話






「待ってください司令!レイでさえシンクロするのに7ヶ月かかったんですよ?
 訓練もしていないこの子には無理です!!」
「葛城一尉。今は使徒殲滅が最優先よ。僅かでも可能性のある人間を乗せるしかないの」
「でも・・・・」
「それとも他に方法があるというの?シンジ君、説明をするからついて来て」
「・・・・・・・・・・」
「どうしたシンジ。乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!!!」

反応を示さないシンジに苛立つゲンドウ。

「人類の存亡をかけた戦いに臆病者は不要だ。冬月、レイを起こせ」
「使えるのかね?」
「死んでいるわけではない。赤木博士」
「はい。もう一度初号機のシステムをレイに書き換えて!急いで!!」

その時、移動寝台に乗って運ばれてくる少女が1人。
ひどい怪我をしているようで、とても苦しそうにしている。

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」

それを聞いて、移動寝台を降りる少女。
だが、怪我の為かふらついて、足元がおぼつかない。

「くっ、シンジ君。貴方が乗らなければあの子が乗ることになるのよ?
 それでもいいの?逃げちゃ駄目よ。お父さん、何よりも自分から」
「いや、そうじゃなくて」

とシンジ

「使徒って何?」

沈黙があたりを支配する。

「ミサト、あなた説明は?」

ジト目で睨むリツコ。

「それはその、ちょっちイロイロあって・・・」
「しなかったのね?そう、分かったわ。ミサト、後で付き合ってもらうわね。実験に」
「それだけはやめてリツコ!私まだ死にたくないわ!!」

・・・・どんな実験をしているんだ?リツコ。

「というか、僕は乗らないとは一言も言ってないじゃないか」
「へ?シンジ君、乗ってくれるの?」
「だから、さっきから使徒が何か教えてくれって言ってるじゃないか。
 大体、乗ったとしても、使徒が何か分からなかったら戦えないだろ?
 てな訳で、義母さん説明をよろしく」

そう言ってリツコの方を見るシンジ。

「シ、シンジ君!何を言うの!」
「だって付き合ってるんだろ?僕としてはいずれそうなって欲しいんだけど」
「良かったじゃないリツコ。シンジ君に認めてもらえて」
「ミサト!!」


現状を忘れて言い合いを始めるリツコとミサト。
その様子を黙って見つめる紅い瞳。シンジはそれに気づく。
少女は言う

「あなた誰?」
「!!!!」

その声に驚くシンジ。その声が余りにも恐山アンナに似ていたからだ。

「僕?僕は碇シンジ。ここの総司令、碇ゲンドウの息子だよ」
「そう、あなたが・・・・」

不意にレイに近づくシンジ。そして、優しく彼女に触れる。

「っ痛!」
「よほどひどい怪我をしてるんだね。少し楽にしてあげるよ。クルハ」

そう言って目を閉じるシンジ。
その瞬間、シンジの手を伝い、クルハの力がレイに流れ込む。
それを見たリツコは、慌ててシンジに質問した。

「し、シンジ君、レイに何をしているの?」
「・・・・少し黙っててもらえないか?」

(イメージが大切なんだ。細胞の1つ1つから、再生していくイメージが)



その時、

ズズン!

揺れるケージ。

「やつめ、ここに気づいたか」

そして、

ドガアアアン!

激しい振動が襲う。そして、照明の1つがシンジに落ちてきた。

「危ない!シンジ君避けて!!!」

ザパアアアアア

ドンッ!

バキンッ!!

「ぐおっ!」

勝手に動いた初号機に弾かれた照明は、ゲンドウ目掛けて一直線。まるで狙ったかのように。
ガラスを突き破り、直撃!ゲンドウは気を失って倒れた。
なお、ゲンドウは直ぐに病院へ搬送され、戦闘が終わるまで目覚めることはなかった。

「彼を守ったの?いける!!」

1人そう言うミサトだが、誰も聞いていなかった。

「これで、だいぶ楽になっただろう?」

驚くレイ。それもそうだろう。なぜなら、
骨折に内臓破裂もしていたはずなのに、痛みが殆ど消えていたのだから。

「治療は専門外だから、完全には治せなかったよ。自分の体ならどうにかできたんだけど。
 2、3日は病院で安静にしていた方がいい。あとは僕がやるよ。
 という訳で、説明お願いします」

そう言ってリツコを見るシンジ。リツコは、レイに何をしたか気になったが、
緊急事態であることを思い出し、説明することにした。レイを運んできた医療スタッフに言う

「あなた達はレイを病院へ。シンジ君、説明をするからついて来て」







エントリープラグに入ったシンジは、ふと思った。
モニターに映る発令所、そこにいるリツコに問いかける。
セカンドインパクトが第1使徒が起こした物であること、
今来ている敵が第3使徒であることは聞いたが・・・

「義母さん、あの巨人が使徒であることは分かったけど、名前は何ていうの?」

「「「義母さん?!」」」

オペレーターの、伊吹マヤ、ロンゲ、めがねが過敏に反応し、リツコを見る。
キッと睨むリツコ。マヤ達は慌てて目をそらす。

「みんな、今は作戦中よ。シンジ君、あの使徒はサキエルというわ」
「サキエル?天使か。だから変な感じがしたのか」
「どういうこと?シンジ君」
「あれ一応生き物なんだろ?でも何ていうか、魂の大きさとか霊力・巫力(ふりょく)が、
 普通の生き物に比べて桁違いに大きいんだ。大鬼くらいあるかな」
「何を言っているの?シンジ君」
「リツコ、質問はあとよ。それより発進準備急いで」
「分かったわ。」



「冷却終了!!ケージ内、全てドッキング位置」
「パイロットエントリープラグ内コックピット位置に着きました」
「停止信号プラグ排出終了」
「了解、エントリープラグ挿入」
「プラグ固定、終了」
「第一次接続開始」
「エントリープラグ注水」 

足下からオレンジ色をした液体が溢れ出してくる。 

「これは?」
「LCLよ、心配しないで。肺がLCLで満たされれば直接酸素を取り込んでくれます」
「それならいいんだけどね」

せり上がってきたLCLを吸い込むシンジ

「血の味がする」
「我慢しなさい。男の子でしょ」

ミサトが言う。ニヤリと笑い答えるシンジ。

「美味しいって言ったらどうする?」
「うっ、ちょっち引くかも」
「だったら我慢しろとか言わない」
「ごめんなさい」

オペレーターたちは、発進準備をすすめる。

「主電源接続!」
「全回路動力伝達」
「了解」
「第二次コンタクトにはいります」
「A10神経接続異常なし」
「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス。初期コンタクトすべて問題無し」
「了解。双方向回線を開きます。シンクロ開始」 
エントリープラグの内壁に光り輝く模様が現れ始めた。

「シンクロ率上昇、まもなくボーダーラインを突破します。臨界突破。初号機起動します」
「シンクロ率20.3%、起動指数ぎりぎりです」

リツコの目には、顔をしかめたシンジが映る。

「シンジ君、どうしたの?」
「いや、さすがは人造人間。ちゃんと魂が入っている。ちょっと話してみます」

そう言って目をつぶり集中するシンジ。

「シンクロ率上昇!25・・・30・・・40%を突破。なおも上昇中!
 78・・・93・・・100%を突破、駄目です、止まりません!」
「シンジ君!」

リツコが叫ぶ。

「大丈夫だよ、義母さん」

冷静に答えるシンジ。

「シンクロ率200%を超えてさらに上昇!300・・・350・・・400%!!!」


パシャッ


シンクロ率が400%になった瞬間、シンジは溶けた。







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