シンクロ率が400%になった瞬間、シンジは溶けた。










シャーマンシンジ

第3話





「どういうことよ!リツコ!!」
「シンクロ率400%。シンジ君はエヴァに取り込まれてしまったわ」
「・・・・何であんたはそんなに冷静にいられるの?」
「さっきシンジ君が言ったこと覚えてる?彼は『大丈夫。話してみます』と言ったのよ」
「じゃあ何?あなたは、これはシンジ君の意志だというの?」
「あるいはエヴァの。もしかしたら、エヴァからシンジ君にコンタクトがあったのかも」
「エヴァから?リツコ、エヴァって何なの?」
「あなたに渡した資料がすべてよ」
「嘘ね。でも・・・・・どちらにせよ、このままじゃ戦えないわ」

その時

「GuWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」

エヴァが雄叫びを上げた。魂のそこから震えが来る様な、そんな声を。











翌日

「知らない天井だ」

目覚めれば病室だった。





リツコの部屋。扉には可愛い猫の表札。
しかし、扉から漏れ出る空気には、何か怪しい雰囲気が満ちている。

「シナリオはB−22か」
「広報部は喜んでいたわ。やっと仕事ができるって」
「真実は闇の中、か」
「正直に伝えたら、それこそ大混乱になるわ。それに」
「そうね。あんなの、公表できる訳ないわね」
「あら、恐いのかしら?」
「当たり前でしょ?あなただって」

にゃ〜ん、にゃ〜ん、にゃ〜ん、にゃ『ガチャッ』

「にゃ〜ん」、それは呼び出し音。
呆れるミサト、照れるリツコ。

「シ、シンジ君、目覚めたそうよ」
「大丈夫なの?特にあなたが」
「失礼ね!ごほんっ、とにかく、彼のことだけど体は健康そのもの。精神に負担がかかっただけよ」
「ココロ、の間違いじゃないの?それより精神汚染は」
「その心配はないわ」
「そう、じゃあ迎えに行ってくるわね」
「あなた仕事は?」
「ぐっ。だ、大丈夫よ。優秀な部下がいるから。じゃあねん、リツコ」

そう言って部屋から出て行った。

「はぁ」

リツコの気苦労は続く。






プシュッ

「シンジく〜ん、迎えに来たわよん」
「あぁ、ミサトか」
「もう退院していいそうよ」
「そうか・・・」
「どうかしたの?」
「父さんに会えないか?」
「う〜ん、今は難しいかもね」
「なんで?」
「ほら、ケージでエヴァが一人でに動いたでしょ?
あの時に司令、怪我をしたらしいの。今は入院しているわ」
「だったらお見舞いは?」
「VIPだから、例え家族でも上層部の許可が要るの。副司令に許可をもらわないと無理ね」
「そうか・・・・。あ、そういえばあのレイって子は?」
「ここに入院してるけど?」
「じゃあその子のお見舞いに行くよ」
「そう?じゃあついて来て」









プシュッ

「レイ、入るわよ」
「はい」
「じゃあシンちゃん、入って」
「お邪魔します」

病室に入るミサトとシンジ。

「改めて紹介するわ。この子はファーストチルドレン、綾波レイ。
 レイ、この子がサードチルドレン、碇シンジ君よ」
「よろしく、綾波」

そう言って手を差し出すシンジ。だが、レイは動かない。
仕方なく手を引っ込めるシンジ。

「・・・・・・・昨日の」
「そうだよ。ところで、体は大丈夫?」
「問題ないわ」
「使徒は僕が倒しておいたよ」
「そう、良かったわね」

会話終了。後が続かない。空気に耐えられなくなったミサトが助け舟を出す。

「シ、シンジ君、手続きとかあるから、もう行かないと・・・」
「分かったよミサト。じゃあね、綾波」
「さよなら」

プシュッ

「何なんだ、あれ?」
「ごめんねシンジ君。レイ、ちょっち変わってるのよ」
「アレはちょっとどころじゃないと思うけど?常識を知らないんじゃないの?
 いったいどんな教育を受けたんだか」
「一応、保護者は碇司令になってるけど・・・」
「父さんの所為なの?」
「面倒はリツコが見てたみたい」
「じゃあ義母さんの所為か。どっちにしろ、息子の僕が責任を取らないと」
「あら〜、シンちゃん。もしかしてレイのこと」

ニヤリと笑ってシンジを見るミサト。その顔はからかう気満々だ。

「確かに、気にはなってる」
「へぇ、シンちゃんてレイみたいのがタイプなんだ」
「そうだね。声とか雰囲気は」
「こ、声?雰囲気?」
「そう。性格は違う」
「じゃあどんな性格が好みなの?」
「そうだね。さっきの病室でだったら、『あんた誰?勝手に入ってくるんじゃないわよ!』
 とか、『使徒を殲滅したからっていい気にならないことね』とか、
 そんなことを言うような、ちょっと高飛車でわがままな性格が好みかな」
「そうなの?」

(性格だったらアスカかしらね)










第3新東京市郊外

夕刻

ミサトは、シンジを連れて、ルノーを飛ばす。あるところまで来ると、車を道端に止めた。

「こんなところに連れてきてどうするんだ?」
「まぁ見てなさいって。ほら、あっちよ」

ミサトが指差した方角には、第3新東京市の町が見える。

「何か寂しい町だね」
「もうすぐよ」

ミサトがそう言ったとたん、町に変化が見られた

「ビルが生えてくる。すごいな」
「そうよ。これがあなたが守った町よ」
「でも、やっぱり寂しい町だ」
「どうしてよ?」
「地下はあんなに霊気に満ちているのに、あの町には余り感じない。
 人間にはいいだろうけど、他の者には住みにくい町だよ。クルハも居心地悪いだろうね」
「そ、そう」

ミサトの計画では、感動させてイメージアップを図るつもりだったのだが、
シンジ相手には無駄だったようだ。





町に帰ると途中、ミサトがコンビに寄ると言い出した。

「なんで?」
「夕食を買いに行くのよん」
「それなら、スーパーにでも行けばいいだろ」
「そ、そりは・・・」
「もしかして、料理できないのか?」

いじけるミサト。顔をそらし頬を膨らます。

「あんまり可愛くないぞ。しょうがない。僕が作るよ」
「シンジ君、料理できるの?」
「竜さんに教えてもらった」




夕食の材料(それとミサトのヱビチュ)を買って、ようやくミサトの家に着いた。
玄関まで来て、

「ここが私の家よ」
「おじゃまします」
「はぁ、違うでしょ」
「何がちがうんだよ?」
「ここはあなたの家でもあるのよ。分かるわよね」
「分からない。というか、どうして僕がここに住むことになったのさ」
「あれ?言わなかったかしら?シンジ君はサードチルドレンとして登録されたの。
 本当は本部内で1人暮らしの予定だったんだけど、私も1人だったから引き取ることにしたの」
「ふ〜ん。まぁいいよ。取りあえずただいま」
「・・・・おかえりなさい、シンジ君」

家に入る2人。だが、

「ちょっち散らかってるけど気にしないで」
「これが・・・・・ちょっち?」

目の前に広がる惨状、人はこれをゴミ溜と言う。
机の上には、散乱するヱビチュの缶やコンビニ弁当の数々。
床にも落ちていて、何かをこぼした様な跡もある。
キッチンも汚いことこの上ない。洗われてない食器のたち。その影にチラチラ見える黒い影。
よくよく部屋を見渡せば、部屋の至る所にその黒い害虫(ゴキブリ)は潜んでいた。

「・・・ミサト」
「なぁに?シンジ君」
「夕食の前に、掃除をするよ。大至急だ」
「後でいいじゃない」
「駄目。ここは人が生活する環境じゃないよ。
やらないのなら、僕がこの部屋ごと処分してもいいけど?」
「・・・・やります。やらせていただきます」




掃除を終えたのは2時間後。2人とも汗をかいてべとべとしていたので、
先にお風呂に入ることになった。まずはシンジから。

「ふぅ」

思わずため息が出る。空腹状態で掃除(年末の大掃除に匹敵)をしたので、
思いのほか疲れたようだ。湯船につかり、しばらくボーッとしていると、

カチャッ

と扉を開けて、誰かがお風呂場に入ってきた。

タッタッタッタッタ

ミサトは思った。やっぱりいきなり会ったら驚くわよね、と
シンジが風呂場から出てくる。

「あのペンギンは何?」
「あの子はね、シンジく『ブゥーーーー!!!!』

勢いよくヱビチュを噴出すミサト。シンジは裸だった。

「なんだよミサト。汚いな」
「ご、ごめん」
「まぁいいけど。ところであのペンギンは?」
「あ、あの子は温泉ペンギンのペンペンよ。実験用に生み出されたんだけど、
 処分されそうになってるところを私が引き取ったの。なんだか放って置けなくて」
「そうか。ミサトって意外に優しいの?」
「いや、私に聞かれても」
「取りあえず、お風呂に戻って、ペンペンと親睦を深めてくるよ」
「わ、分かったわ」

シンジはお風呂へ戻った。ミサトは呟く。

「アレがシンジ君の本当の姿。受け入れられるかしら?私でも・・・」






お風呂が終われば、夕食の時間。

プシュッ

ゴクゴクゴクゴクゴクゴク

「っぷはぁ〜〜〜!人生はこのためにあるようなものねぇ。それにしてもシンジ君、料理うまいわね」
「味については、アンナさんが厳しかったからね。
 例え竜さんが作ったものでも、アンナさんが気に入らないと作り直しだし」

懐かしそうに話すシンジ。

「修行もしたけど、僕はあそこで家族を知った。あの人たちに会わなかったら、
 僕はどうなっていたか分からない。いつも他人の目を気にして、
うじうじした内向的な性格になっていたかもしれない。本当に感謝してるんだ」
「・・・・・・そう。シンジ君」
「何?」
「良かったわね」
「そうだね。本当に」
「ところで、さっきからアンナって人の名前が出てくるけど、もしかして」
「そうだよ。僕の理想のタイプ。ふんばり温泉女将、恐山アンナさん」
「どんな人?」
「厳しい人だったよ。地獄に行くより、あの人の修行の方がきつかったくらいだし。
 空気椅子2時間とか平気でやらされるんだよ?旦那さんの葉さんはともかく、
 ハオさんさえ逆らえない人。でも優しかったんだよ」
「ハオさん?」
「ハオさんは、単体では最強のシャーマン。知ってる?
巧妙に人工衛星にカムフラージュされた実験兵器。SDI・X線レーザーを」
「いいえ」
「まぁ、公表はされてないみたいだしね。この世界にあるのかも分からないけど。
 レーザーは秒速30万キロメートル、威力は百兆ワット。
 ハオさんは、これに直撃されたのに無傷でいられるような人」
「・・・・・マジ?」
「おおマジ。僕も、クルハがいれば何とか耐えれるようにはなったよ。
 無傷とはいえないけどね。1週間は入院する事になると思う」
「それでも十分すごいと思うけど・・・・。って、もしかして使徒は」
「うん?エヴァに乗らなくても倒せたよ。というか、乗らない方が簡単だったかも」
「アハハハハハハハ」

もはや理解不能。笑うしかないミサト。

「何なら鍛えてあげようか?サキエルくらいなら、ミサトも倒せるようになるかもしれないよ?」
「本当に?」
「ただし、凝り固まった思考に囚われないこと。諦めないことが肝心だけどね」
「・・・・分かったわ」
「そうと決まれば、早速始めようか。ミサト、お前の部屋はどこだ?寝るぞ」
「へ?そこの部屋だけど」

それを聞いて、スタスタと歩いていくシンジ。ミサトの部屋に入る。
が、ミサトは呆気にとられたままでついて来ない。

「ミサト、何をしてるんだ。さっさと来いよ」
「へぇ?」
「だから、一緒に寝るんだよ」
「だ、駄目よシンジ君!」

赤くなるミサト。勘違いをしているようだ。

「ミサト、修行といっただろう?何もお前を抱こうというわけじゃないよ」
「ほ、ほんとに?」
「ネンネじゃあるまいし、隣に寝てるだけで興奮はしないよ」
「シンジ君、経験あるんだ?」
「11歳の時にね。竜さんの友達のマッスルパンチさんに、連れて行ってもらった。
 という訳で、安心しろ。何もしないから、さっさと来いよ」
「わ、分かったわ」

部屋に入るミサト。シンジはすでに布団の中に。ミサトも、ドキドキしながらも布団に入る。

「こ、こんなことで修行になるの?」
「僕が右手に巻いているモノは何?」
「ブレスレッド。殺生石の・・・って、まさか!」

ミサトは慌てて布団から出ようとするが、
シンジにがっしりと押さえつけられていて、抜け出すことができない。

「いったろ?死んで地獄に行くことが一番手っ取り早いんだ。
心配しなくても、ちゃんと生き返らせてやるから」

そう言ってミサトを抱きしめるシンジ。その瞬間、ミサトは息絶える。

「さてと、僕も行きますか。ミサトの実力からいって、まずは地獄門にたどり着くまでだね」


こうして、葛城家の夜は更けていく。
ちなみに、ミサトはちゃんと次の日の朝には生き返らせてもらえました。







前日

サキエル戦


「GuWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!」



その声を聞いて、動けなくなるミサト達。その時

「初号機がMAGIにアクセスしています!」
「何ですって?」

モニターにウィンドウが開き、文章が映し出される。



「マイ・ファウスト・ラブ」

作詞・作曲 ファウスト8世


枯葉舞い落ちる    秋の午後

彼は毎夜見る     君のユメを

オ・モ・イ・ハ・セ・テ

君と2人   手をつないで歩いた   高速道路(アウトバーン)

高鳴る胸   君の脈拍も  高速でした

誰も僕達を止められはしない  愛は鼓動のように

A・¥(永・遠)

さあ、目を開けて

ミ・ツ・メ・テ・ク・レ

3目のエリザ

マイ・ファウスト・ラブ





「・・・・何これ?」
「もしかして、シンジ君かしら?心配しなくても戦えるということなのかも」

その時、すっかり存在を忘れられていたご老体が発言した。

「かまわん、初号機を出せ」
「副司令!ですが」
「どちらにせよ、使徒を倒さなければ我々に未来はないのだ」
「・・・・分かりました。初号機、発進!!」




サキエルの目の前に射出される初号機。

「初号機、リフト・オ『ボッ!!』
「な!」

いつの間にか、右手を上げていた初号機。そして

「パ、パターン・ブルー消失。使徒、殲滅を確認」

サキエルは、右腕を残し、跡形もなく消し飛んでいた・・・・








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