「・・・・ありがとう、みんな」







シャーマンシンジ
第7話





シンジが転校してきて2週間。「できるだけ秘密にしておいて欲しい」との願いもなんのその。
シンジがエヴァのパイロットである事は、もはや全校生徒に知れ渡っていた。
休み時間のたびに教室に押しかけるものもいたが、多少は落ち着いてきている。
皆初めのうちはただ物珍しさで見に来ていただけだった。
しかし、エヴァの兵器としての欠陥(痛みを感じる事など)が分かると、
逆にそれでも戦ってくれるシンジたちに惹かれた者たち(主に女生徒)がファンクラブを結成し、
シンジたちの学校生活を守る為、面会を制限。
月に2回あるファンクラブの集いに参加をしなければならなくなったのだが、
それでも休み時間のたびに押しかけられる事は無くなった為、
覚悟していたよりは随分穏やかな学校生活を送る事ができていた。
しかし、結局のところファンクラブの会員の殆どは「エヴァのパイロット」であるシンジたちに
憧れていただけだった。しかし、最初の集いの際にシンジがクラスメイト達に説明したように、
自分たちのことなどを話すと、思っていた事とのギャップに離れていく者もいたが、
それでも残った者たちは、真摯に受け止めてくれて、確かな友人となってくれた。
特にレイについては、幼い頃からパイロットとして訓練していた為に、
一般的な常識を殆ど知らない事を伝えると、皆喜んでレイの教育に手を貸す事を約束してくれた。
実際、NERVに行かない日などは、皆で買い物に行った事もあった。
そこでもレイの「持っているのは制服だけ」発言などあり色々あったのだが・・・・。
おかげでレイに初めての友達ができた。
ヒカリはもちろんだが、リョウコ、それにファンクラブの元締めである東城リエである。
身長が170cmを超え、艶やかな黒髪腰までの長髪。いつも物静かで眼力のある瞳。
その上成績もトップクラスで身体能力も高い。一見「カッコいい」といわれる雰囲気の彼女だったが、
実は以外に内気で可愛い物好きな性格で子供も好き。
リエは、集いの時に今まで話をしたことも無かったレイと初めて話をしたのだが、
時折首をかしげたりする仕草や、まっすぐにこちらを見る瞳に保護欲を刺激され、
すっかりレイを気に入って、実の妹のように接するようになった。
今日も、レイが「分からない」と首を振る仕草に思わず抱きしめてしまい、
なにやら誤解をした男子生徒に粛清しようとすごい形相で追い回してる。
それを微笑んで見ているレイも感情が豊かになったということだろうか。
クラスメイトは、それをはやし立てたりして騒いでいた。


「いったい何のさわぎや?」

ジャージ姿の男子生徒は、久しぶりに登校したクラスの騒ぎように驚いた。

「何や、あないな事あった後やのに、皆ずいぶん元気やのう」
「あれ?トウジじゃないか」
「おう、ケンスケ。久しぶりやな」
「どうしたんだよ。もう2週間以上休んでたじゃないか」
「・・・・・この前の戦闘でな、妹が怪我したんや。
 まったく!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ!!
「大丈夫なのか!?」
「まぁ、幸い命に別状は無いようや。ただ骨折が酷くてな。今は入院しとる」
「そうか・・・・」
「せやから、ケンスケ。ロボットに乗っとったパイロットのこと、
 分かったら教えてくれへんか?絶対に妹に償いはさせたるさかい!!」
「あ、あぁ・・・・」

ケンスケは迷った。シンジには、あの戦いがどんなものかは聞いていた。
それに、トウジにシンジの事を教えれば、大事になる事は分かっていた。
だが、教えてあげたいという気持ちもあった。
しかも、だ。この前話を聞いた時自分はシンジに殴り飛ばされた。
自分は悪い事をしていないのに(ケンスケ主観)だ。
トウジをけし掛けて、シンジに一泡吹かせたいをいう気持ちもあった。
そこで

「パイロットなんだけどな・・・・・アイツなんだよ。
 ほら、あの皆に囲まれてるやつ。見ない顔だろ?この前転校してきたんだよ」
「・・・・・アイツが?あのヘラヘラ笑うとるヤツがパイロットなんか?
 ナツミんやつはあんな目に遭うとんのにアイツは!」

トウジは、怒りに身を震わせながら、ツカツカとに歩み寄る。

「おい転校生。ちょっと面貸してもらおうか?」
「もう直ぐ授業が始まるし・・・ここじゃ駄目なのかな?」
「いいから付いて来いっちゅうとるんじゃ!!」

トウジの様子に、周りで騒いでいたクラスメイトも静かになる。

「付いてきた方がお前の為やぞ?自分がやった事も反省せんで
 ちやほやされやがってからに」
「なんの事か分からないけど・・・・ここでいいよ。さぁ、話して」
「そこまで言うならええやろう。お前がこの前ドンパチやったパイロットらしいのう」

それを聞いて、シンジの纏う雰囲気が、真剣なものに変わる。

「誰に聞いたの?」
「ケンスケや。なんや自分、隠しときたかんたんかいな?残念やったのう」

トウジはシンジを見て、侮蔑の意を込めて笑う
シンジはケンスケを冷たいまなざしで見つめる。

「・・・・それで、パイロットの僕に何か用なの?」
「おう、そうや。パイロットやからってちやほやされていい気になっとるんやないで!」

ドガッ

トウジは、そう言ってシンジを殴った。

がしゃん!

椅子に座っていたシンジは後ろへ倒れこんでしまう。
唇は切れていた。

「っ痛!一応理由は聞こうか」
「妹がな・・・・妹のやつが怪我したんや。お前が暴れた所為でな!
 ええか!今度からは足元をよう見て戦うんやな!!」

トウジは、鼻息も荒く言う。
だが、今この教室にいる全員は先日の戦いの事を知っている。
シンジが戦ってけが人が出たということはありえないのだ。
それに、シェルターが被害を受けたとは聞いていない

「妹さんはシェルターにいたの?」
「・・・・・外や。大事にしてた人形を家に忘れてのう。
 わしの目を盗んで取りに戻ったんや」
「なんだって?」

シンジは立ち上がり、「やれやれ」という感じでため息をつく。
それがまたトウジの癇に障る。

「皆にも話したけどね。シェルターの外までは責任を負えないよ。
 非難するのは君たちの義務なんだよ?それを怠ったのはそっちじゃないか。
 それに妹さんも悪いけど、しっかり見ていなかった君の所為でもあるよ」
「そ、そやかてお前がちゃんと戦っとったら、あないに町を壊さんかったらナツミは・・・・」
「僕は戦って町を壊した覚えは無いよ。
 誰に僕の事を聞いたか知らないけど教えてもらわなかったの?」
「なんやて?どういうことやケンスケ!!」

皆の注目がケンスケにいく

「・・・・君だったのか相田君。一応理由を聞こうか?」

そう言ってシンジはケンスケに近づいていく。だが

ピピピッピピピッピピピッ

「非常召集。先に行くわ」

そう言ってレイは教室を出て行く。

「はぁ。取り合えず、使徒と戦わなきゃいけないから行くよ。
 また今度理由は聞くからね。ほら、皆いそいで避難しなきゃ。
 それと・・・・・君名前は?」
「へ?あ、あぁ。鈴原トウジや」
「じゃあ鈴原君。今度は外に出る人がいないようにちゃんと見張っててね」

そう言ってケンスケを見るシンジ。

「お、おう。まかせとけ!それとスマンかったな。殴って」
「過ぎた事はもういいよ。その代わりちゃんと見張っててよ?じゃ行って来るから」

シンジは教室を出る。

「頑張れよー碇」        

「怪我すんなよ」

         「絶対勝てよ!」          「頼んだぜ!」

「「「せーの、シンジ君がんばってー!!!」」」


皆の応援をうけて。この日常を守るために






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